Boiled Eggs をめぐって
展開するあらぬウワサ…

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待ち合わせ

才能に賭ける

小滝橋トオルのできるまで

 

12月7日木曜日

今月号の「ダ・ヴィンチ」を読んでいて、驚いた。『ミシン』の嶽本野ばら氏が、男だったのである。ぼくはペンネームといい作風といい、乙女チックな耽美(?)が売りの女性新人と頭から思いこんでいたので、虚を突かれ、一瞬異次元空間に放り出されたかのような錯覚を覚えた。

根が単純にできているせいか、こうした思いこみが昔から多い。

出版社に勤めていたとき、『イギリスの釣り休暇』という本を作った。本国のベストセラーで、フライフィッシングにまつわる作者の半生の回想記なのだが、ロアルド・ダールの短篇小説のように話が面白くできている。釣り名人の芦澤一洋氏(先年亡くなられた)と名翻訳家の永井淳氏に翻訳を頼み、装幀は和田誠氏、いよいよ体裁が整い、帯のキャッチコピーを考えているときに、この話の中身はすべてフィクションと判明した。

そう思ってみれば、あちらのベストセラー・リストでは常に「フィクション」のジャンルにリストアップされていたのである。回想記なのに不思議なこともある、とは思ったが、そこに趣向が隠されていたとは。急遽「回想記」をとり、「出色の釣り文芸」と入れたが、永井氏のあとがきは間に合わず、結局二刷めに以上の経緯を書き足してもらった。

デビューしたばかりの五條瑛氏(『プラチナ・ビーズ』『スリー・アゲーツ』)に紹介されたときのくだりは、「待ち合わせ」という小文に書いた。

最近では、作家・心理カウンセラーの梶原千遠氏に会ったときもそうだった。名前を見ても作品(『きれいになりたい5つのタイプ』『子どもの心が見えますか』)を読んでも性別がわからず、ぼくはなんとなく男性と思っていた。待ち合わせのホテルのロビーで「muratさんですか」と声をかけられ、見ると、可愛らしい小柄な女性が立っているではないか。ぼくは一瞬虚を突かれ……(以下同文)。

嶽本野ばら氏の場合は、もともと週刊読書人から三浦しをんに書評の依頼があり、少ない情報のなかでアドヴァンスト・プルーフに目を通したときの印象が刷り込まれてしまったせいかもしれない。

ともかく、書評を書いた三浦先生もご存じないのではと思い、ぼくはさっそくメールを出した。そして案の定、笑われた。以下がそのメールの一部である。

もちろん知ってましたよー。
私の書評を読み直してみてください。
「乙女とは性別にかかわらず」とあるでしょう?

読み直してみると、たしかに「年齢性別にかかわらず、自分を乙女であると認識し、乙女たらんと心がけるのなら……」とある。ぼくはここでも虚を突かれ、そして三浦しをんという作家の洞察力のあまりの深さに、体が寒くなった。

蛇の道は蛇、とのたとえが脳裏に浮かんだが、もちろん負け惜しみだということはわかっている。

 

11月27日月曜日

当初の予定から1カ月ほど遅れてしまったが、小滝橋トオルの新連載『Sketches』をお届けする。短篇小説でもエッセイでもなく、いわば「創作のためのデッサン」といった趣向の読み物である。小説家のスケッチブックにはどんなことが描かれているのか、そのデッサンの一枚一枚はやがてどんな物語に昇華されてゆくのか、そんな作家の舞台裏に読者の思いが及ぶ連載になればいいと願っている。

合木こずえ『こずえの試写室』は前回写真の手配に不手際があり、更新が大幅に遅れてしまった。本来なら次回は今日更新のはずなのだが、そんなわけで、一週順送りとなり、次の更新は12月4日(月)の予定。いましばらくお待ちいただきたく。

三浦しをん『しをんのしおり』は諸般の事情により今回から月曜更新とすることにした。日曜が月曜になっただけで、他はなにも変わらない。引き続きご愛読くださるようお願いします。

 

(murat)

 
 
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