待ち合わせ

村上達朗

「三田評論」(慶應義塾)
1999年6月号

 

 

 遅ればせながら、映画「ユー・ガット・メール」を観に行った。常日ごろ電子メールで仕事のやりとりをしているので、興味があったのである。ビジネス上では利害関係にある男女が、お互いに匿名であるがゆえに恋に陥る。現代的な通信手段と古典的なラブコメディを結ぶセンスがお洒落で、観ていて気持ちよかった。
 ぼくはいま著作権エージェントという仕事をしているが、作家との打ち合わせのほとんどが電子メールだ。先日、地方在住の著者(女性)が、東京に来ることになった。評判の国際謀略小説を上梓した新人作家のお祝いだという。ではついでにとお会いし、歓談ののち、作家と待ち合わせる書店の場所がわからないというので、案内することにした。
 書店に入ると、奥の方から若い女性が近寄ってくる。横にいた著者が「会えてよかったねー」というなり、いきなり目の前の女性と抱きあったのを見て、ぼくはびっくりした。作家は男性名だし、当然ながら男だとずっと思い込んでいたからである。
「あのー、こちらがその○○さんなんですか」
 先の映画を観ているときには、こんなまぬけな質問をして女性二人から笑われることになろうとは夢にも思わなかった。

 

 

 
 
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