●滝本竜彦
講評
完璧な作品は存在しません。どんな小説にも必ず欠点があります。
ですが欠点以上の長所がある作品には立派な価値が生まれます。
今回は薄味な作品の応募が多かったように思いました。自分の長所を見極め、自分の長所を伸ばしてください。それが人の記憶に残る作品を書くための近道だと思います。
以下、目についた作品の講評です。
『第四ベイビー』
あまり世界設定に必然性が感じられませんでした。SF的設定を用いずとも妖怪を登場させることは可能ではないかと思います。もっと設定をシンプルにわかりやすくすれば、登場人物や話の面白さがさらにクッキリ浮かびあがってくると思います。
『マネー、パワー、リスペクト、and...?』
オタクと黒人という取り合わせは面白いと思いますが、個々のネタが有機的に結びついていないように思えます。オタクと人種問題という、普段あまりくっつくことのない概念が結びついているのですから、そこから得られる結論も、オタクの視点によって導き出されたものであるべきです。今回の応募作の中では、一番面白く読むことができました。
『グリーンマン・プロジェクト』
一番の問題点は、このゲームの目的が最後まで明かされていないことです。読者が一番知りたいのは、『コンタクト』的な方法で宇宙から送られてきたMMOGの正体です。その正体がまったくわからないために、このゲームに人類が取り組まねばならない動機が薄くなり、結果、登場人物への感情移入が難しくなっています。このゲームをクリアできねば何が失われ、クリアできたら何が得られるのか、闘争のリスクとリターンをはっきりさせる必要があると思います。
『彼女には自身がない』
前回の応募作よりも格段に文章が良くなり、それに比して作者のオリジナリティがよりいっそうはっきりと窺えるようになりました。あとはもう少しだけキャッチーな要素があれば、どこに出しても恥ずかしくない立派な作品になるのではないかと思いました。 |