第22回ボイルドエッグズ新人賞
2019年2月1日

受賞の言葉
大石大


 大学で社会学を学びました。
 面白い学問でしたが、同時に就職には何の役にも立たない、と感じました。
 実際、何の役にも立ちませんでした。
 面接官に「大学で勉強したことは仕事にどう生きますか」と問われて答えに窮したことがあったほどです。面接は落ちました。
 だけど、無駄だったとは思っていません。
 就職する上で直接的に役に立つ知識や資格を得る代わりに、大切なことを知りました。
 世の中にはさまざまな形の社会があり、ひとつの社会にもさまざまな立場の人がいること。「正しさ」「善悪」といった価値観は不動のものではなく社会や立場によって大きく変わること。
 世の中は一筋縄ではいかないことばかりで、物事を正しく知るためにはさまざまな方向から考える必要があること。そして、考えるためのヒント。
 大学で学んだことは、きっと仕事や人生においてものを考える中で自然と生かされるはずだ。そう思って、大学を卒業しました。
 まさか、卒業から十二年も経って、社会学を扱った小説で新人賞を受賞するという形で、直接的に役に立つ日が訪れるとは夢にも思いませんでした。
 本当に、世の中は一筋縄ではいかないものです。
 この小説で、社会学の魅力を少しでも味わっていただけたら幸いです。


著者プロフィール

大石大(おおいし・だい):
1984年秋田県生まれ。法政大学社会学部卒業。現在は公務員。『シャガクに訊け!』で第22回ボイルドエッグズ新人賞を受賞。


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