船体に重くぶつかる波が、ゴオンゴオンと背中に振動を伝えてきた。陸が近い。この海はいつも荒ぶっている。
拝島(おがみじま)は人の出入りを喜ばない。……
高校生の悟史はその夏、十三年ぶりの大祭でにぎわう島に帰省する。島民の様子がおかしい。島は大祭を前に不穏な空気に包まれ、しかも「あれ」が出たという噂が流れていた。
禁忌と伝説が、怪異な出来事が、友との体験が、秘められた想いが、少年を成長させる。
ほぼ十カ月にわたり、三浦しをんはこの作品の執筆に全精力を傾けてきました。
「少年たちが冒険をする児童文学が私はとても好きなので、ちょっと淫靡な香りの漂う夏の夜の冒険物語を書きたいなあ、と思ったのがこの話にとりかかるきっかけでした。それには「島」という閉鎖空間はうってつけのように感じられ、舞台に選びました」
と著者自身が語るとおり、今回は児童文学の味わいを盛り込んだ、エンターテインメント性の高い、そして秘密の匂いも濃厚な作品に仕上がっています。
「少年文学の新たなる名作」がいま誕生しようとしています。どうぞご期待ください。
|