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村上 万年18歳の三浦しをん先生と、30代であるにもかかわらず60代であるかのような含蓄のある文章をお書きになる加藤文先生の、「新人作家、爆裂対談」を始めます。ウィークリーとバイマンスリーとの違いはありますが、それぞれ連載中のうっぷんが溜まっていると思うので、爆裂してくださってかまいません。ふだん聞かれないような話を、ざっくばらんに話してください。では、加藤さんよろしくお願いいたします。
●デビューのいきさつ
加藤 100回は長かったですか。
三浦 その週その週、目先のことしか考えてないので、とくに長いということもなかったんですけど。
加藤 これで1年……。
三浦 1年半くらいでしょうか。
村上 1年半は超えました。一昨年の11月1日からなので、もう2年近いですね。
加藤 ぼくは3回目くらいから読み始めて、たまたま準備段階のBoiled
Eggs Onlineを見つけていったのですが、最初なんのホームページかわからず、三浦さんのを読んでいた。そのうち店開きしたのを見て、すぐ応募したんです。三浦さんあって、ぼくがデビューできたという(笑)。
三浦 そんなそんな(笑)。ふーん、そうでしたか。
加藤 でも、そういう応募者は多いと思いますよ。
三浦 そうだといいですけど、どうなんでしょう。
村上 連載を読んで、あたしもぼくも応募してみようと思っていただけるのは、いちばんうれしいですよね。。そのためのショーケースとして連載していただいてるのですから。
加藤 ぼくは最初の数回を読んで、すっかり騙されて、てっきり18歳なんだと思いこんでました。
三浦 やった(笑)。
村上 いまだに18歳と言い張っているんですよ。
加藤 あ、すいません、いまだに18歳ですか(笑)。
三浦 いやー、18歳ですからねえ。ホントに18歳なんだからしょうがないんだけど。でも、昨日のエッセイで初めて、私がどれだけギリギリに書いているかというのがあきらかにわかるというのになってしまったんです。
村上 ほんとにギリギリですねえ。
三浦 はあ、もうギリギリだよーと思っているときに、村上さんからメールが来て、あのー誕生日って書いてあるのに、なんでまだ18歳なんですか、とか言うんですよー(笑)。
加藤 はははは。
村上 19歳になったんじゃないんですか。
三浦 そうじゃないんだ! 誕生日の1日前に17歳になって、誕生日にまた18歳になるという永遠の繰り返しなんです。
加藤 そろそろ弟さんが追いついてきて(笑)。
村上 永遠に高校生なわけないんだから、そのうち大学生になっちゃう(笑)。
三浦 そこは問題ですね。もう弟の話はしないようにしないと。
加藤 サザエさんも一生サザエさんのままですから。
三浦 サザエさんなんです。
●文章がブレていない
村上 そういう話はいままでも何度かあって、もう数年間夏休みに泳ぎにいってないとか書いているんです。だけど、昨年、たしか沖縄で泳いでいるはずなんですよ。
三浦 そうそう。
村上 一応、きちんとチェックして、これ事実に反するんじゃないんですかと書くでしょ。「いいんですこれでー」(笑)。
加藤 村上さん、そういうのはいいんですか。
三浦 いいんです。どうせ覚えてないですよー、みんな。
加藤 村上さんは事実のチェックが厳しいですよね。
三浦 細かいんですよー、村上さんは。
加藤 ほんと細かいですね。
村上 なんか流れがよからぬほうに……。
加藤 いや、うっぷんを晴らせという(笑)。でも、三浦さんは書いている文章が最初からブレていないですよね。100回を通して。そのへんは、あんまり迷いってないんですか。最初から完成されてるんですか(笑)。
三浦 しおりを書くときには、しゃべる言葉にたいへん近いので、それが染み出ちゃうっていうか……。
加藤 しゃべる言葉で書けるってすごいですよ。完全な言文一致ですよね。
三浦 そうでしょうか。どうなんでしょうねえ。
加藤 ぼくはそういうふうに書ける人ってうらやましいんです。
三浦 でも、いまちょっとそうじゃない方向へ行こうかなと思っているんです。しおりでも、もうちょっと作っていこうかなあという気がしなくもないんですけど。
加藤 三浦さんは作っても、作り物っぽいものにはならないでしょう。
三浦 うーん、そうなればいいいですけどねえ。
加藤 連載を始めるときに、どうやって書いたらいいのかなとほんとにわからなくて、先の三浦さんと同じもの書いてもだめだなと思ったんです。じゃ、なにを書いたらいいかということがほぼ半年続いたんですよ。ようやくこのごろ、後先のことを考えずに書くのがいちばんだと気がついて(笑)。
三浦 (笑)そうですよね。
●どこまでがホントでどこまでがウソか
加藤 あれは、日記と言いつつ、ほんとの日記じゃだめなんですよ。虚実の皮膜の部分を書かなくちゃならないということが、初めはなかなかわからなかった。へたに書くと、小説になっちゃうんです。後先考えずに書くと、かえって読者は作者の意図しないところに起承転結をつけて読んでくれるんじゃないかと(笑)。
三浦 加藤さんのを読むと、どこまでがホントでどこまでがウソかというところがすごく気になって。
加藤 そう言っていただけるとありがたいです。
三浦 いつも、ええー、どうなっちゃうの、この女の人はいったい!?……とかいろいろ思うんですよ。
加藤 いいですね。ぼくの場合は、(これは読者に聞こえちゃうわけですが)ホントのことですよね。三浦さんはどうなんですか。作ってるんですか、あれは(笑)。
三浦 いや、だいたいホントのことですね(笑)。加藤さんのは、どうしよう、これがほんとだとしたら、とか思って……(笑)。
加藤 2週間あると、けっこういろんな人に会えるんです。ただそれを大したことないなと思って書いていると、じつはとんでもない出来事だったなということがあらためてわかったりする。
三浦 そういうのってあるかもしれないですね。
加藤 これいいなと思って書くと、村上さんは意外といい顔しないんですよ。これは作りすぎですねえ、と。
三浦 自分にとって大事件と思えることがいいとはかぎらないみたいですね。
加藤 ぼくの場合は2週間に1回だから、三浦さんより1週分多いんですよ。ネタ拾いの機会が。
三浦 でもまあ、そうなるとどれを取捨選択するかがむずかしいのではないですか。
加藤 それはないですねえ。これで毎週となるとどうなるか。その上で本業の小説を書くわけですから、これはちょっとたいへんだろうなあ。
三浦 通して書いていると、どうしたって変わってきますよねえ。
加藤 実際変わってきました?
三浦 気分に波があるのも書いててわかるし、あとはその長さに慣れると、コツみたいなものが身に付くということはあるかもしれないですね。
加藤 ぼくは読んでいて、ときどき余計な心配をするんですよ。三浦さん、いま元気かなとか(笑)。
三浦 もうダメだーとか(笑)。
加藤 これは持ち直してきたなとか(笑)。
三浦 いままで私は日記をつけるという習慣が全然なかったし、いまもないんですけど、あれを書くことによって、あ、そういえばあんなことあったよ、こんな夢見たよ、とかそういうのが後でわかって楽しいですね。
加藤 あの夢はホントに見てるんですか(笑)。
三浦 夢はだいたい、ホントに見てるんですよ(笑)。勝手に日記代わりにして、私の記録が残ってああよかったいうのは個人的にすごくありますけどね。
●書き続ける理由
加藤 途中で、こんなのやめようと思ったことあります。
三浦 いつももうやめたいもうやめたいと思ってます。
加藤 そこで書かなきゃいけないなと思うのはなんですか。
三浦 えー、村上さんが怒るからです!(笑)。
加藤 はははは。村上さんは怒るとこわいですよね。
村上 これこのとおり、温厚そのものではないですか。
加藤 ぼくのメールソフトは、村上さんから届くメールにはピンポンと鳴るように設定してあるんですよ。
三浦 へえー、そんなことができるんですか。
加藤 できるんです。最初はこれは便利だなと思ったんですよ、絶対見落としがなくて。このごろはその音を聞くのが心臓に悪い(笑)。
三浦 やですねー(笑)。
加藤 やなんですよ。やめようかなと思って。
三浦 でも、無音のまま忍び寄られるのもやですよねえ。
加藤 それもまたやだなーと。たとえば午後3時にメールで原稿を送りますよね。その返事が何時にくるかというのが……その待ちがやなんですよね。
三浦 そうなんですよねえ。
加藤 果たしてこのままビールを飲んでのびのびとしちゃっていいのか。
三浦 そうそう。
加藤 ぼくの場合もそれが土曜、日曜にかかっていて、いちばんリラックスしたいときに……。
三浦 できないんですよねー。
村上 ぼくも、言いたい。
加藤 なんですか(笑)。
三浦 言いたいことわかったような気もするけど(笑)。
村上 加藤さんの原稿は、土曜日が締め切りなんですが、だいたいいつも5時か6時ごろ届くんですよ。届くと読まなくちゃいけないじゃないですか。
三浦 そらそうですね。
村上 でも、私の場合は、6時から7時というのは夕食の時間帯なんです! そういう時間に限って原稿が届く。こりゃ苦しいです。すぐに読んですぐに返事しなくちゃならないんですから。三浦先生の場合は、もっと悲惨なんですよー。
三浦 シーッッッ。
村上 声を大にしてぼくは言うぞ。
加藤 なんですか。教えてください(笑)。
村上 三浦先生の場合も、土曜日が締め切りなんですが……だいたい夜中ギリギリなんです!
三浦 はっはっはっは。
村上 土曜日って12時までじゃないですか。
三浦 11時59分とかなんですよ。しかも昨日はちょっと遅れたかなあ。
村上 一応日曜更新をうたっているので、12時になったら更新したい。でも、11時59分にもらっても、12時までに更新なんてできませんよー。読める読めないじゃなくて、その時間帯にずーっと待機してるんです。ぼくが書くわけじゃないから何時に原稿が入ってくるのか皆目見当がつかない。もしかすると10時かもしれないし、11時かもしれないし、12時過ぎかもしれない。その間ずーっと待機してるんですよ、わたくしは。毎週ですよー。
三浦 わかりました。わたくしがわるうございました。えんえん(泣)。
村上 少なくとも2日前か3日前にいただければ、こんな楽なことはないんですけど。しかも、個人的なことを言えば……私は朝が早いんです。
加藤 わはははは。
村上 ですから、夜の10時ともなればきついんです。
●まっとうすることの難しさ
三浦 わかりました。善処します。でも、だめなんですよ。……加藤さんは、夏休みの宿題は早くにやるほうでしたか。
加藤 いや、ぼくは遅くて、さらにやらなかったタイプですよ。
三浦 ああ、ですよね! 私もそうなんですよ。でも、村上さんは7月中に終わらせるタイプなんですよ。気があわねえや(笑)。
加藤 ちょっと異常な子供ですね。
三浦 そうですよ。いけないですよ。
村上 だって、ぼくは卒業する1年前に卒論を書いた人間ですから。
三浦 おかしいでしょ、こんなの。
加藤 4年で書いて5年までいたんですから、そりゃあたりまえですよ(笑)。
三浦 そういえばそうだ(笑)。
加藤 その話は知れ渡ってるんですから。
村上 4年のときでも、自分の卒論は早々に終えて、友達のを手伝ったという。なんて優秀なんでしょう。
三浦 ほらー、聞きましたかあ。
村上 聞きましたかって、優秀なんですよ、それは。
加藤 優秀か優秀じゃないかの問題じゃないですよ。
三浦 ですよねー。人間性の問題ですよ、これは。
村上 心がけの問題じゃないですかー、それは。
加藤 なんか、病気じゃないかなあ。
三浦 こんな人いないですよ。
村上 原稿の締切も、だいたい1週間前に上げてしまう。
三浦 やっぱりおかしいですよ。もう推敲に推敲で、推敲を50回ぐらい重ねちゃってるんですよ、きっと。
加藤 池波正太郎さんが締め切りの1週間前に必ず原稿を上げていて、推敲に推敲を重ね、文庫に入れるときも直しが入らないような状態で入稿する。どうせ後でやるんだから今やっとけという姿勢を貫かれていて……。
三浦 さすがですねぇ。
加藤 さすがだなと思っていて、ぼくも作家になる前はそうなろうと思ったんですよ。でも、無理ですね(笑)。
三浦 そりゃ無理ですよ(笑)。あ、でも、加藤さんはいけるんじゃないですか。池波先生と同じく美食系で、こだわりがいろいろとあるから。
加藤 こだわりはありますけど、無理ですねえ。ぼくは池波先生の作家としての心構えというか姿勢を尊敬していて、先生は絶対偉ぶらない、特別に思わない、自分は書くことが職業なのだから職業をまっとうするためには、そういうふうに生活する。そのためには、暴飲暴食はしない、二日酔いはしないというんですね。しかし、これをまっとうすることの難しさというのはありますよねえ。
(2000.9.24/横浜・海南飯店にて収録) ■
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