バイマンスリー/
新世代作家の心象風景

6月
25日月曜日

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 scene14: Too Many Policemen

 

 通りに面した二階のカフェの窓際から、交差点を行き交う歩行者を見下ろせる。
 薄曇りの午後、ぼくは文庫本を置いて、いつものとおり何気なく外に視線を落とした。
 交差点の真ん中に、ひとりの格幅のいい警官が立ち、彼を取り囲むようにたくさんの制服警官と婦人警官が並んでいる。ひとつの横断歩道に三人ずつ、合計十三人もの大人数だった。
 大きな事故でも起こったのかと思い、アイスコーヒーに口づけながら、辺りを見渡した。
 信号が消えている。
 交差点をコントロールする四つの信号のすべての灯が消えていたのだ。明かりのない信号機はちょうどぼくの目線の高さで、魂を失くした生き物みたいに瞼を閉じていた。
 耳を澄ますと、鳥の鳴き声に似た笛の音が甲高く響いている。数匹が休むことなく交代で鳴き続け、非常事態を知らせていた。読書に集中していたせいか、まったく気づかなかったけれども、五分も十分も前から続いている様子だった。
 人があふれているため、交差点はいつも以上に狭く見える。その中央に立つ警官がオレンジ色の警告灯を振ると、婦人警官たちが笛を吹き、腕を曲げ伸ばして、人とクルマを誘導した。警告灯の動きはしなやかで力強い。指揮者とオーケストラの関係のような、無駄なく統制された動きだった。
 一連の動作は留まることなく繰り返されている。
 笛の音とともに横断歩道が開かれ、クルマの進路が複数の警官によって塞がれる。それが、およそ三分おき。歩行者とクルマは、彼らの指示どおりに「止まる」と「進む」を続け、誰一人、交差点内で右往左往することがなかった。
 お祭りや歩行者天国付近での交通整理は何度も目の当たりにしていたものの、これほど完璧な“パフォーマンス”を見るのは初めてだ。クルマが無視することもなく、無茶な横断をする者もなく、警官と警笛は完璧に信号機になり代わっていた。
 折からの強い風で電線が前後に揺れる。と、そのとき、笛の音がいっそう高く大きく聞こえてきた。ピピピピピッと小刻みに鋭く何かを警告している。
 停止線から飛び出た軽トラックが一台。相撲の突っ張りのポーズで、二人の婦人警官がバックを命じている。運転手は窓から顔を出して、後続車を気にしながら、しぶしぶとハンドル操作した。横断を止められた歩行者たちは、その様子をただじっと見守っている。
 少しして、四つの信号は長い眠りから覚めたみたいに同時に目を開け、役目を終えた警官たちは交差点を置き去りにした。堂々とした彼らの後ろ姿は、まるで最新式のロボットのようだった。                              

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