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scene17:
ラフォーレ前
夏休みの女子中高生が原宿の街を闊歩している。竹下通りは毎日がお祭り騒ぎだ。
待ち合わせでごった返す原宿ラフォーレの前に、目新しい日傘がひとつだけ咲いていた。向かい側のガードレールに腰かけるぼくと目の高さが同じくらいの年輩の女性だった。黒いワンピースを中年太りのお腹に張り付け、額に落ちる汗を何度もハンカチでぬぐう。庇のある場所のため、傘はまったく必要ないのだが、そんなことはお構いなしに自分の空間を守っていた。
彼女も、誰かを待っているようだ。
腕時計をちらりと見たあと、視線を左右に動かした。
時刻は午後二時十五分過ぎ。「誰か」は、もう十五分以上も彼女を待たせているのだろうか。
たくさんの話し声がひとつに固まり、テレビを水の中に閉じ込めた感じのゴボゴボした音が聞こえる。
日傘のすぐ近くで、ブルーのTシャツを着た少女が、携帯電話ごしに大きな声で笑い始めた。ベンチシートにはクレープを交換し合うカップルが座り、紺のスーツを着た色黒の男は、通りすがりの女性に声をかけ続ける。慌ただしいエキストラたちを背に、中年女性はじっと同じ場所に止まっていた。真夏の大木にへばり付くアブラゼミみたいに。
バイクの爆音が、明治通りを行き過ぎたとき、待ち合わせの相手がようやく姿を現した。ロックバンドの親衛隊風の半袖革ジャンパーにタータンチェックのミニスカート、ふたつに分けた髪の両方に赤いリボンがついている。日傘の後ろから、「わっ!」と驚かすポーズをした。
年頃からして、おそらく娘だろう。
母親は一瞬後ずさり、驚きよりも困惑した表情で彼女に振り向いた。同時に、「元気?」なんていう短い挨拶をする。会話は聞き取れなかったものの、どこかぎこちない雰囲気だった。
スーツの男がまたナンパに失敗し、カップルはそれぞれのクレープを食べ終えたらしく、ベンチから立ち上がった。
母親は娘に日傘を差し伸べた。
他人の視線が気になるのか、少女は五十センチほど距離を空けて歩き出す。そして、二、三歩歩いてから、背の高い彼女が、母親の日傘を自分の手に持ち替えた。
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