今月のゆでかげん(受賞作家 競作エッセイ)

お題:平成の終わりに 小嶋陽太郎 2018年10月8日

来月のお題:リセット
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お題:平成の終わりに/小嶋陽太郎 2018年10月8日
貴様いつまで子どもでいるつもりだ


 平成生まれの僕たちは大人から好き勝手に「ゆとり世代」とか「さとり世代」とか名付けられて、欲がないっちゅうか闘志がないっちゅうかギラギラ感がないよねえ、いまの人たちは。そういうのってどうなんだろうねえ、俺たちの若いころはさあ。などとちょっとうるせえことを言われてきたが、平成生まれなんだから当たり前じゃないですか。
 平らく成るで平成。そんなのっぺりした響きの時代に生まれたのだから、欲がないっちゅうか闘志がないっちゅうかギラギラ感がないっちゅうか、な若者が多いのもむべなるかな。温度の上がり切らない平熱の感じ。そうした平成トーンが僕たちには宿命づけられているのだ、平成に生まれた時点で。平成じゃなくて隆起か爆発か気合か凸凹かなんかにしてくれればもっと目が爛々とした元気のいい若者が多くなったに違いないのに。
 平成が終わるのは、正直に言ってさみしい。というかこわい。
 僕は平成三年に生まれて、当たり前だがずっと平成を生きてきた。平成の終わり=僕自身の子ども時代の終わり、青春時代の終わりを突きつけられるような気が、どうしてもしてしまう。
 平成最後の年に僕の通っていた保育園はケヤキの木と神社的なもの(が敷地内にある)を残して跡形もなく取り壊されたし、いろいろな方面から、目に見えない何かに大人になることを迫られているような気がする。
 などと言うと、いい大人が何を馬鹿なことを言ってるんだと言われそうだけど、できることなら僕は死ぬまで子どもでいたい。とけっこう真剣に思っている。
 最近、とうとう二十七歳になってしまった。
 僕は二十七歳になりたくなかった。
 二十七といえば両親が僕の姉貴その一を産んだ年齢である。たまにそのことを考えてガーンとなる。
 もっと言うと、ちょっと種類が違うけど、そしてベタだけど、ジミヘンとかカート・コバーンとか、少年期青年期の僕を音楽でぶっとばした人が死んだ年齢でもある。ガーン。などという生易しい漫画的擬音では到底すまされない焦燥感。
 俺は二十七にはまだ早過ぎるぜ。
 ふとしたときに冷や汗をかくのである。
 なんというか、二十七という数字と自分という人間が絶望的にマッチしない。人間としての強度が二十七という年齢に明らかに追いついていない。
 ともかく来年四月、常に自分とともにあった平成が終わる。そして新しい時代が来る。宿命づけられた平成トーンから脱却して、隆起か爆発か気合か凸凹みたいな感じで、ジミヘンかカート・コバーンみたいな感じで、ぎゃーんと二十七に追いついていきたい。
 でも追いついたときには三十七とかになってそう。


著者プロフィール

近況:
Hey!Say!JUMPは平成が終わってもHey!Say!JUMPと名乗るんだろうけど、どんな感じのテンションで名乗るのだろう。

小嶋陽太郎(こじま・ようたろう)
1991年長野県松本市生まれ。2014年『気障でけっこうです』(KADOKAWA)で第16回ボイルドエッグズ新人賞を受賞しデビュー。その後、在籍していた信州大学人文学部を中退。第二作は15年『火星の話』(KADOKAWA)、第三作は『おとめの流儀。』(ポプラ社)、第四作は16年『こちら文学少女になります』(文藝春秋)、第五作は17年『ぼくのとなりにきみ』、第六作は『ぼくらはその日まで』(以上ポプラ社)、第七作は『悲しい話は終わりにしよう』(KADOKAWA)。文庫化作品に『気障でけっこうです』『今夜、きみは火星にもどる』(『火星の話』改題/いずれも角川文庫)、『おとめの流儀。』(ポプラ文庫)がある。「小説すばる」「小説新潮」にそれぞれ連作短篇を発表。2018年4月、「小説すばる」の連作短篇をまとめた単行本『放課後ひとり同盟』を集英社から刊行。9月、「小説新潮」の連作短篇をまとめた単行本『友情だねって感動してよ』を新潮社より刊行。


Back Number 2017

10月のお題:平成の終わりに
生きた化石…………………………尾﨑英子
貴様いつまで子どもでいるつもりだ
       …………………小嶋陽太郎

二年号参り…………………………園山創介

9月のお題:エモい
母がなくなって、一年経って……尾﨑英子
夕暮れのマジック……………………黒瀬陽
ほんものの競馬おじさん………小嶋陽太郎
はじめての木登り…………………園山創介

8月のお題:宴のあと
祭りのあとのあと……………………黒瀬陽
ATMコーナーのおばあさん………園山創介
膝の痛え家………………………小嶋陽太郎

7月のお題:96
時に、西暦一九九六年………………黒瀬陽
身体は出口を感じてる?…………尾﨑英子
プレハブ小屋の店長………………園山創介
職業体験記………………………小嶋陽太郎

6月のお題:夏への扉
イマジナリーフレンドと『くらげホテル』
       ……………………尾﨑英子

はじめましたって言われるアレ
       …………………小嶋陽太郎

膨張狂想曲……………………………黒瀬陽
割り箸の上の鳥……………………園山創介

5月のお題:トラベル・ミステリー
愛と幻想のタイムトラベル…………黒瀬陽
うつろな温泉………………………園山創介
あずさにて………………………小嶋陽太郎

4月のお題:櫻の樹の下に
黒瀬陽の東方見聞録…………………黒瀬陽
愛でたい春…………………………尾﨑英子
らんまん娘と薬味…………………園山創介
秘密の活動………………………小嶋陽太郎

3月のお題:卒業
同級生だもの………………………尾﨑英子
my graduation………………………黒瀬陽
Taiko Super Kicks のちヨシキ
       ……………………小嶋陽太郎
 
はじまり旅行………………………園山創介

2月のお題:聖バレンタインの惨劇
さよなら平成…………………………黒瀬陽
猟奇的な彼女……………………小嶋陽太郎

1月のお題:無題
お犬様と年男…………………………黒瀬陽
2018年宣言…………………小嶋陽太郎

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